街への鍵 / ルース・レンデル

連休も横浜でグダってた私が読んだのがルース・レンデルの『街への鍵』だ。
そのルース・レンデルはこの5月に鬼籍に入られたとか。
ご冥福をお祈りします。

毎日ジムで会うおばちゃんに似ているので、勝手に親近感がわいてしまう…

さて本書はそんなレンデルの1996年の長編である。その当時の英国を舞台にした作品なのだが、訳者の方がおっしゃるように、なぜか全く時代感は感じない。

群像劇のようなストーリーも、ミステリーの組み立ても月並みでなく、ルース・レンデルならでは。それぞれの登場人物のストーリーが語られていき、最後、カメラがずずっと引いていくと、あっ!と全体像が見えてくる。

 

メインの主人公はメアリ・ジェイゴという若く美しい女性だ。
彼女は、支配的な恋人アステリアと暮らしていたが、ある時、白血病患者のために自分の骨髄を提供したことで、殴られ彼の家を出る決心をする。ちょうど祖母の友人夫妻が旅行に出かけるため、リージェンツ・パークのそばの屋敷の留守を預かることにしたのだ。
彼女はかねてよりレピシエントに会いたいと願っていたが、その願いがかなってレピシエント、レオと会う。淡い金髪、白い肌の二人は双子のように似ていた。そして彼女は次第にレオに惹かれていく。

一方、妻子を亡くしたショックでホームレスに身をやつしていたローマンは、自分にいつも挨拶をしてくれるメアリを遠くから見守っていた。
同じ頃、リージェント・パークでは「串刺し公」と呼ばれる殺人鬼によるホームレス殺人が立て続けに起こっていた。

物語は、メアリとレオ、ホームレスのローマン、メアリが預かっている留守宅の犬の散歩を請け負っている老人ビーン等、複数の視点を交え進行していく。

だが、このビーンの前職は執事。彼が執事をしていた頃に見聞きした出来事が、物語のひとつの鍵にもなっている。やはり英国は階級社会なのだと感じてしまう。
メアリの祖母や友人がアステリアと別れた彼女を励ますために催すパーティーの様子と、底辺のホブの生活との対比は生々しいまでで、持てるものと持たざるものの現実が描かれている。

本書の原題は「The Key To The Street」
問題とされているのは街でもストリートでもなく、それを隔てているスパイクのついた鉄柵であるのだというところも面白い。

 

 

Spenth@: 読書と旅行、食べることが好き。