個性溢れる面々のイタリア版87分署シリーズ第二弾「誘拐 P分署捜査班」

お待ちかねだったシリーズの第二弾!
言うなればイタリア版87分署。しかも舞台はナポリ!


誘拐 P分署捜査班 (創元推理文庫)

そのナポリの最も治安の悪いと言われる地域にあるピッツォファルコーネ署、通称P署は大半が汚職で逮捕され閉鎖の危機に。そんなP署に急遽集められたのは、これまた曰く付きの”ろくでなし”たちの面々・・

第一弾の「集結 P分署捜査班」では文字通りP署のメンツが「集結」し、殺人事件を解決するオハナシ。

P署の個性的な面々については、もしも前作を読んでないのならば、四の五の言わずまず読むべし。
このシリーズの面白さは、P署の面々のキャラクターにある。どんな経緯でP署にやってきて、どんな外見で、どんな特徴があり、どんなことに悩んでいるのか等々。
ぶっちゃけ、事件そのものやその顛末も大したことはないが、人の描き方に魅力があるのだ。
突き詰めると、物語の面白さというのは、それに集約されるのかもしれない。
まあ、個人的な意見ですけども。どんなに精巧に組み立てられたトリックやミステリーも、人間そのものが持つ面白さ、不可解さには敵わない。

主要登場人物がそこそこ多いため、重複説明は丁寧になされていないので、第1作目は必読。
ついでにナポリの絶景も空想上だけども味わえるし、損はしないと思う。

今回の事件は、タイトルの通り「誘拐」事件。
ナポリの大資産家の10歳の孫息子ドドが、課外授業で訪れていた美術館で姿を消してしまう。
監視カメラを見るに、金髪の女に嫌がる様子もなくついて行ったらしい。その女とドドは顔見知りと思われ、直ちに誘拐と断定はできなかったが、犯人から電話があり、事態が動き出す・・・

イタリアで誘拐・・・ああ嫌な感じ。
結構昔の本だけど「破産しない国イタリア」だったかな?誘拐を生業とした組織のことが書いてあった。
富豪の子息を誘拐し、今では風光明媚の代名詞のようなサルデーニャ島の洞窟に隠し、身代金を要求する。世話は羊飼いの少年が担当するが、被害者が少しでも抵抗すると袋をかぶせられた上からボコボコに殴られ、時に死に至ることもある。
その実、70〜80年代はこうした誘拐が多かったらしい。
有名どころではアメリカの石油王ジャン・ポール・ゲティの孫の事件があるが、クィネルの「燃える男」も、この事件に着想を得たものだとか、なんとか。

ドドが無事に帰って来られるといいなぁと思いつつ読んだのだが、意外な顛末。
いや、意外でもないけど先送りというべきか・・・

ほとんど主人公的な役割の、シチリア人のロヤコーナ警部には新しい恋が始まりそうで、他方、最古参で副署長のピザネッリが数年もの間たった一人で追いかけている連続殺人事件については、読者に気前よく犯人が明かされる(まあ想像通り)
このピザッリが追っている連続殺人事件は、このシリーズを通じてのテーマになっているのだが、今後の展開が楽しみ。

全体的に今回は、ちょっとメロウな雰囲気。
「5月を信用してはいけない」「5月はすぐに裏切る」というフレーズがやたらリフレインされるのだが、これはブレイクかなんかの詩かな?と思いきや、そうではないみたい。
後書きを読むと、どうも87分署を強く意識したものらしい。

日本には”5月病”という病気もあるが、5月がいい気候なのにもかかわらず、どこかメロウで、少し油断するとガクンと体調も精神状態も落ちやすいのは、イタリアも同じなのかな?

 

 

 

 

 

ちなみに、イタリアは南にいくにつれて路駐がグチャグチャになる。

 

 

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