映画チョコレートドーナツ

ゲイのカップルとダウン症の少年の物語なのだが、これは泣く。
1970年代のアメリカ・ブルックリンで実際にあった話をもとにシナリオ化された作品で、ミニシアター系としては異例のロングランヒットとなったそうだ。

舞台はまだ同性愛への理解がない1970年代後半のカリフォルニア。

ゲイであることを隠し検事局で働くポールは、歌手を夢見るダンサー、ルディと出会う。二人は互いに惹かれ合い、恋に落ちる。

ルディのアパートには薬物依存症の母親と暮すダウン症の少年マルコが住んでいた。ある日、マルコの母親は男と姿を消し、挙げ句、薬物所持で逮捕されてしまう。
このままだと、保護者を失ったマルコは強制的に施設へと送られてしまう。ルディはなんとかマルコを手元に引き取ろうとポールに助言を求める。

一旦は、「仕方ない」と冷たく突き放したポールだったが、「薬物依存の母親もダウン症もマルコのせいじゃない」というルディの一言に心を動かされる。

そして、自分たちの関係を”いとこ”と偽り、マルコとともに暮らし始めるのだった。
二人のもとで、マルコは生まれて初めて学校に通い始める。ポールはマルコの宿題を手伝い、ルディは毎朝朝食を作って、眠る前にはハッピーエンドの話を聞かせて眠らせる。

二人は、まるで本当の両親のようにマルコを愛し、大切に大切に育てた。
だが、3人で暮らし始めて1年が経ったある日、ポールとルディがゲイのカップルであることが周囲に知られてしまう。関係を偽ったことが原因で、ポールは検事局を解雇され、マルコは再び施設へと送られてしまうのだった。二人は絶望する。

「これは差別よ。今こそ法律で世界を変えるべきなのよ」というルディの言葉で、ポールは差別と偏見のために奪われてしまったマルコを取り戻す裁判を起こすが…

 

差別と偏見、愛とはどういうものかを問う素晴らしい作品だが、ルディを演じているアラン・カミングがすごくいい。

最近では、ドラマ「グッド・ワイフ」のイーライのスノッブなイメージだったのだが、一転、この映画ではロングヘアでオネエ言葉(字幕では)、女装も、プロ顔負けの歌も披露している。
こんなにすごい俳優さんだったなんて!!!

聞けば、彼自身も同性愛者らしいのだが、それを抜きにしても素晴らしい。
最近でこそゲイをカミングアウトする有名人も多くなったが、まだ風当たりは根強いのだろう。いわんや日本人をや。一般人をや。

同時に、愛情というものについても考えさせられた。
つい先日も、次々出産した乳児の遺体を遺棄した母親のことがニュースになっていたが、件の母親は「いらない子だったから」という趣旨の供述をしているという。そういう問題かと思うが、こういう母親もいるのがまた事実だ。

母親だからといって子供を愛せるというわけではないし、ルディとマルコのように血の繋がりがなくても愛情を育むこともできる。
ルヘイン原作の『愛しき者はすべて去りゆく』 をベン・アフレックが監督で映画化した『Gone Baby Gone』のラストを思い出したりもした。

せんだって、渋谷区でようやく同性婚を認める条例がようやく承認されたらしい。
ゲイのカップルが何の障壁もなく養子を迎えられるようになるのは、どれくらい先なのだろうか。

 

 

Spenth@: 読書と旅行、食べることが好き。