億男 / 川村元気

お金に関する本で最近読んだのは『21世紀の貨幣論』だ。

あれがフルコースならば、本書はファストフード
雑誌BRUTUSに連載されていたらしいが、ブルータス、まだあったとは(←失礼!)
マガジンハウスなので、テイストはいかにもそういう感じ

主人公は一男という男である。
昼間は図書館で司書として働き、夜はパン工場でパンを丸めている。百貨店に勤める妻と9歳になる娘がいるが家族とは別居しており、パン工場の寮に住んでいる。

別居の原因は、一男の弟が3,000万の借金を残して失踪してしまったからだ。親には余裕がなかったため一男が肩代わりをすることになった。
妻も妻の両親も援助するといってくれたが自分で返そうと心に決めた。しかし、次第に妻とは口論が絶えなくなり、家を出て行ってしまった。つまり、一男の今の状態の原因は”お金”だ。

ところが、偶然商店街の福引きで貰った宝くじが当選してしまった。しかも3億円という大金だった。
ネットには高額当選者の悲劇が溢れている。たくさんの人がお金によって不幸になっているという現実がそこにはあった。
彼はそれにとまどい、かつての親友で今は億万長者の九十九に連絡をとる。15年ぶりのことだった。あることで一男と九十九は疎遠になっていたのだが、一男にとって親友と呼べるのは九十九しかいない。
お金と幸せの答えを教えてくれるのは、九十九しかいなかった。
しかし、九十九は一男の3億を持ったまま失踪してしまうのだ・・・

えっとですね、私の感想は、一男はオロオロしてないでまず借金返そうよ?ということである。
そもそも弟の負債を兄が負う義務はない。例えば兄ば亡くなった場合の相続は、当然のことながら兄の妻子、その妻子がいなければ親、親も鬼籍に入っていれば、ようやく弟に順番がまわってくるのだ。法的には兄弟姉妹はそういう扱いだ。
それに、なんの担保も財産もない人間に大金を貸してくれるほど世の中は甘くない。駄目な弟の借金というのもリアリティ乏しい気がする。

ただ、所々差し挟まれる著名人のお金に関する金言はとても興味深かった。トルストイ、ビル・ゲイツ、チャップリン,etc,etc こうした金言は重い。

九十九にお金を持ち逃げされた一男は、その行方を追ってかつての九十九の同僚を訪ね歩く。
その3人はかつて九十九とともに会社を立ち上げたメンバーであり、その会社の成功と買収で今では九十九同様億万長者だ。

彼らのそれぞれのお金に対するスタンスは面白かった。
お金から自由になったと思っているが逆に絡めとられている十和子。
百瀬は常にアドレナリンを求め賭けを続ける。お金を持ってるということの恐怖とたたかうためだろう。
また、千住はお金というものの実体のなさに取り憑かれている。
彼らに共通しているのは、形こそ違えど皆お金を恐れているということだろうか。

「お金と幸せの答え」について最後に一男がたどり着いたのは、あなたの予想通り。

 

ちなみに、わたしは常に6億当たったら・・・と妄想しております。シミレーションはばっちり。あとは当たるだけ〜

 

 

 

 

Spenth@: 読書と旅行、食べることが好き。