ザ・ドロップ / デニス・ルヘイン

九州へ旅行に行っており、台風とともに戻ってきた(笑)
昨夜は横浜も大雨だったが、今日は気持ちのいい晴天。そして暑い…
まだ5月なんだけど・・・

 

本書の主人公は、ボストンの裏町に生きるバーテンダーのボブ。
ボブは孤独だった。
望んでいるのは、ただ、ひとりでいたくないということだけ。だが、それが叶えられないのはわかっていた。
彼は敬虔なカソリックであり、毎週欠かさず教会に通っているが彼は聖体を受けとったことさえないのだ。

そんなボブは冬の冷え冷えとした夜に一匹の子犬を拾う。その犬は歩道わきのゴミ箱に捨てられていた。
死にかけていた子犬を胸に抱いたそのとき、近くのアパートに住むナディアが声をかけてくる。小柄で、あばたがあり、喉元には赤黒いミミズ腫れがあった。
彼女によると、犬は闘犬(ピットブル)で引き取り手は少ないだろうという。

飼うにやっかいだとされるピットブルだが、それでも子犬はボブにとってまぎれもなく天で配られる聖体だった。
そんな折り、店に強盗が押し入り売上金が奪われる。それは店を牛耳っているチェチェン人の金だった。チェチェン人は激怒し、ボブとマーヴに犯人を見つけ金を取り戻すよう脅す。

やがて、年間で最も多額の金が賭けられるスーパーボウル・サンデーが近づいてくるが・・・

物語が進行するに連れ、なぜにボブが頑に聖体を受け取らないのかが明らかにされる。それは大方の想像の通りだが、読んでいると、それがいけないことなのかさえ揺らいでくる。
こうした複雑な人物造型はルヘインならではだ。その奥行きと深さがもう違う。

訳者も指摘するように、コンパクトながらルヘインらしさというものを存分に味わえる作品に仕上がっていると思う。
ただ、文学的に過ぎるきらいがあるので、好みは割れるだろう。

訳者によれば、本書は元々短編だったものが映画化(トム・ハーディ主演)されることになり、その脚本を長篇に仕上げた作品なのだという。
残念ながら日本公開は未定らしい。

 

 

 

Spenth@: 読書と旅行、食べることが好き。