勝者総取りの世界を生きるためには…?「the four GAFA 四騎士が創り変えた世界 」

最近よく聞く言葉のひとつが「GAFA」。
Google 、Apple、Facebook 、Amazonといったテクノロジー業界四天王だ。


the four GAFA 四騎士が創り変えた世界

GAFAは私以上に私のことを知っている。
ヘビーユーザーなので、アマゾンは私の消費活動のほとんどを知っている。
検索はいうに及ばず、デジカメの写真をGoogleフォトにストレージしているので嗜好や行動は筒抜け。勝手に色調補正を申し出てきたり(余計な御世話)、「ある土曜日の午後」などとタイトルをつけてせっせとアルバムを作ったりするほどだ。
気持ちが悪いのでFacebookにだけは手を出さないが、Instagramを時々眺めているのでザッカーバーグに貢いでいるのも同じだ。
それらにはApple社のスマホやPCのいずれかを使っている。

GAFAは中国系企業や×天に比べるとまだマシだと思われるため、利便性と引き換えに、自発的に情報を渡している。

ところで、タイトルの「the four 」は、ヨハネの黙示録の四騎士のことなのだそうだ。ということは、GAFAはそれぞれ地球を4分の1づつ支配し、剣と飢饉、死と獣によって地上の人間を殺す権威を与えられている。

四騎士は世界を支配しようとしている。
それは個人消費のみならず、政治にも影響を与えるほどの力だ。アメリカ大統領選でトランプ大統領を誕生させたのは、Facebookのマーケティグ広告だとも言われている。

そして今、グローバル化によって世界は「平等に不平等」になりつつある。例えばかつての中国と日本の経済は逆転したが、それぞれの国内の格差は広がりつつある。富めるものはますます富み、中間層は落ちぶれてじきに下層に合流しそうだ。
今はごく一部の超優秀な人間にとっては最高の時代だが、平凡な人間にとっては最悪な時代だと著者はいう。実際その通りだ。今の時代は勝者総取りに向かいつつある。

NYUスターン校で教鞭をとる著者は、平凡な人間がこの残酷な世界をどう乗り切るべきなのかを示そうとする。実はこれが本書の趣旨なのだ。
そのためには何よりGAFAについて知ることが大事だといいこれらを解説する。すなわち支配者を知るべし。

面白いと思ったのは、GAFAのビジネスのあり方を人間の脳、心、性器に結びつけて説明している点だ。
人間の欲望や意思決定は、脳、心、性器と深く結びついている。だから四騎士もそこを攻める。
GoogleとAmazonは理性的で合理的な判断をする脳に、Facebookは人と繋がりたいという心に訴えかける。
Apple は特別だ。性器に訴える。ただし極めて上品に。
Appleは今やシャネルやヴィトンと同じ高級ブランドだと著者はいう。他のラグジュアリーブランドと同様にApple製品を持つことは持ち主をエレガントでクールに見せると思わせる。
ブランド戦略を専門とする著者のAppleの考察だけでも一読の価値がある。

良きにつけ悪しきにつけ、四騎士の特性を知った上で著者が読者に促すのはよく言われる常識的なことばかりだ。いい大学に入れ、心を成熟させよ、何かを成し遂げる体験をせよ、都会に出よ、新しいものを受け入れよ、好きなことではなく得意なことをやれ…
平凡だからこそ、これらが必要なのだと。

これから大学を目指そうという若者には有効だが、こちらは生憎ともう取り返しがつかない。
私個人に有効で肝に銘じておくべきは、「豊かさとはいくら稼ぐかではなく、いかに計画できるかということだ」という言葉だった。

まあ、愚かな人間にとってはそれが難しいのです…

 

 

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