「人類はなぜ肉食をやめられないのか?250万年の愛と妄想のはて」牛豚鶏羊、犬肉、謎肉、人肉まで。

人は肉食を愛している。特に欧米人は肉が主食だといわれるほど消費量も多い。米が主食といわれていた日本人も肉を多く食べるようになった。
本書はなぜ人類が肉を食べるのが好きなのかを探求した本である。

250万年の愛と妄想のはてに・・・思わせぶりなサブタイトルがついているが、まさに人類にとっての肉食は単に愛している以上のものがある。
肉という食物がもつ栄養価の高さ、味わいはいうまでもない。肉食のおかげで人類は大きな脳を獲得できたという研究者もいるほどだ。そして、肉食は人類にとって男性力のシンボルだ。
250万年前、大きな獲物を狩る能力は女子にとってアメックスのプラチナカードに匹敵する。
ベジタリアンでさえ肉食は男性的だと思っているという。

人類が肉食をやめられない理由は、たくさんありすぎるくらいある。

一方で、実は栄養学者の間では肉食は推奨されていない。その割には100歳以上でメディアに登場するご長寿さんたちは肉好きな気もするが、実はタンパク質は肉をたべなくても豆と穀類、野菜だけでも十分にとれるという。

だが、私たち(の多くは)様々な複合的な理由によって肉食をやめることができないのだ。

一世を風靡したものにカップヌードルの「謎肉」がある。その材料が先頃明らかにされたが、あれは大豆ミートなのだそうだ。
この大豆ミートはベジタリアンに大人気だ。
そうなのだ。実はベジタリアンたちも肉を欲している。
大豆ミートは肉を食べたいが食べられない人たちのための代替品だ。

本書では様々な角度から肉食の歴史、科学的、文化的意義について取り上げるが、とりわけ面白かったのは、肉のタブーについてだった。
イスラム圏では豚を、ヒンドゥ教は牛を食べることを禁じている。欧米人(日本人にとっても)犬はペットもしくは相棒であって、断じて食べ物ではないが、韓国や中国、インドネシアの一部では食べ物だ。
キリスト教の国々ではアイスランドなどの一部を除き、馬肉がタブーとされている。
犬や馬が賢くかわいい有用な動物だから食べないというのには、全く説得力がない。豚もまた犬並みに賢いのだから。

そして世界のほとんどの国では人肉はタブーだ。
ただしこれには例外も多く存在する。社会制度的に認められていたカニバリズムは世界中に多くある。パプアニューギニアのコロワイ族は現代最後の食人族といわれているし、コンゴの兵士にとってピグミー族は「戦争食」だった。他にも緊急避難によるやむを得ない食人や精神異常によるものもある。

つい最近も、ロシア南部で女性を殺害した後、その遺体と共に自撮りしたうえ、遺体を食べていた夫婦が逮捕されたというニュースがあった。
犯行がばれたのは、うっかり落とした携帯の写真を拾った人が発見したからだ。彼らはこれまで30人ほどを食べていたとも言われる。
このケースはおそらく精神異常かはたまた嗜好的問題な気がするが、ハンニバルではないがこの手の人々によると、人肉は美味しいということになっている。
よく人間は雑食だからまずいに決まっているという人がいるが、それをいうならば豚も雑食だ。

多くの文化圏で人肉がタブーであり人々が生理的な嫌悪感を催すのは、近親相姦と同様、クロイツフェルト・ヤコブ病などいった現実的問題があるからだろう。だが、それをものともしない文化も人々もある。

ここで断っておけば、著者は人肉については触れていない。

地球環境の悪化と人口の爆発的な増加が続けば、人類が肉食を続けるのは困難になるのは自明の理だ。
2050年には人口は90億人を突破すると言われている。その膨大な人口を養うために、肉に投資するのは全く非効率だ。肉を作るには膨大なトウモロコシ、米、麦をはじめとした人間が直接食べることのできる飼料が必要なのだから。水問題も立ちふさがる。地球は干あがりつつあるのに、肉1キロをつくるには水は1万4000リットルも必要なのだ。肉はごくごく一部の人にしか手に入らない高級品になっていくだろう。

この難局を乗り越えるためには「昆虫食」が提案されている。
ビジュアル的になかなか勇気が・・・

なぜエビやカニ、貝は大丈夫でバッタやイモ虫がダメなのかは自分でも説明がつかない。

 

90億人を突破するまであと30年あまり。
人類は250年前に肉食を覚えて以来、未だかつて肉食をやめられていないが、牛豚鶏羊のようなあらゆる家畜の肉はほとんどの人にとって手が届かないものになっていくだろう。
その時、最も豊富なのは人間だ。

ちょっと恐ろしいことを想像してしまった・・・

 

いえ、この本自体は人肉の本ではなく、もっと真面目な「普通の」肉食についての探求本なので、くれぐれも誤解なきよう(笑)

 

 

 

 

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