それでも都知事再選は確実「女帝 小池百合子」

出だしは少し嫌な感じ。著者の「小池百合子嫌い」がビシビシと伝わってくるからだ。
まあ、気持ちもわかるけど(苦笑)


女帝 小池百合子 (文春e-book)

芦屋の社長令嬢の実情に、疑惑のカイロ大学卒業・・・
それらは全て虚像に過ぎないと槍玉に上げられているが、あながち「嘘」というわけでもない。

一口に芦屋と言っても色々で、その全てが「細雪」に描かれたような高級住宅地なわけでもない。
それに、後に破産したものの、父親は会社を経営していたし、阪神間の私立のお嬢様学校に通ってもいた。芦屋の社長令嬢と言われて私たちが勝手にイメージするほどではなかっただけだ。

ただ、その父親は見栄っ張りの「大ボラ吹き」だったらしく、彼女自身、父親の価値観に大きな影響を受けて育ち、成長してからは愛憎交じる感情を抱いていたようだ。

そういえば、ジョン・ル・カレの父親も詐欺師だった。彼もまた父親の意向で場違いなパブリックスクールで学んだ。息子に上流階級のアクセントを身につけさせるためだ。
後にル・カレはスパイとなり物語を紡ぐ作家となったが、彼女はキャスターになり政治家になった。
その政治家になるにあたり武器としたのは、自分をめぐる「物語」だったという。

「カイロ大学卒業の真偽」については、カイロ大学が卒業を公に認めている。留学当時同居していた女性はそれを否定しているが、当時はともかく、現在は卒業したことになってしまったようだ。
著者も指摘するように「エジプト社会はコネと金がすべて」。しかも、日本はエジプトにとって最大のODA出資国。日本の大臣経験もあるほどの人物に対しては、たいていのことはまかり通る。

少々事情は異なるが、自民党のプリンスが父親の推薦で米国の有名大学院卒業に学歴ロンダしたことに通じるものがある。確か彼はその前にも別の有名大学に留学したものの、そこは卒業できなかったはず・・・

自力で海外の一流大学に入り、懸命に勉強した人は頭にくるだろうが、国内ならいざ知らず他国のことに口は出せない。

本書は終始、小池百合子という人が紡いできた物語は虚飾だという切り口で語られている。
秘密主義で誰も信用しないし誰にも胸襟を開かない。人を平気で裏切る等々・・・

だが、彼女や前述のプリンスのような、イメージ戦略がうまく、メディア受けがいい人が選挙には強い。彼らを当選させるのは私たち大衆だ。

私個人は、政治家は必ずしも清廉潔白な人格者でなくてもいいと思っている。国益にかなうのであれば。
そもそも我々庶民すら、江戸時代の狂歌にもあるように「白河の清きに魚も住みかねて」だ。

ただし、他人を裏切り利用価値がなくなると平気で切り捨てる人は、国民も裏切る可能性が高い。

芦屋令嬢やカイロ大学卒業といった経歴よりもよほど真剣に捉えるべきは、彼女が政治家になってからこれまで成したことの方だろう。
これというものは、環境大臣時代の「クールビズ」だけ「あの方は、肝心なことよりもどうでもいいことを張り切る」とはさる女性議員の小池評だ。

あとはかなり酷い。防衛大臣時代、辺野古のサンゴ埋め立てを再浮上させて混乱させ、彼女の起用に懲りた安倍政権に冷遇されれば、機を見て都知事に転身。都政においても豊洲移転問題を縺れさせただけ。
そして、野党第一党だった民進党解体を招いた希望の党騒動・・・
しかし時間が経てば人は忘れる。

都知事としての公約も、瞬間的なペットの殺処分ゼロ以外には成し遂げていない。
都知事としての評価は決して高くないが、それでも彼女は再選される。
なぜなら他の候補者はもっと帯に短し襷に長しだから。都市部の選挙は知名度が鍵。名前が売れている人はキワモノすぎるし、地方自治の経験がある人は無名すぎる。本当に彼女は強運だ。

聞けば、東京都の予算は、スウェーデンの国家予算に匹敵するらしい。タイトルにある「女帝」というのは、少々大袈裟すぎると思ったが、そうでもないのかも。

 

 

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