人工知能と経済の未来 2030年雇用大崩壊 / 井上智洋

 
 
 
 
リオ・オリンピックもついに終わってしまった。閉会式の安部マリオも小池都知事の和服姿もよかったですね(*^_^*)
都知事の着付けに物言いもついているようだが、お着物自体も自前らしいし品もいいし私は似合ってたと思う。呉服屋さんたちも喜んでいるのでは?
 

さて、本書はベストセラーになっている文春新書である。「人口知能」というワードに惹かれて購入してみた。

内容は、アマゾンなどの紹介そのままで、
「AI(汎用性AI)の開発がすすめば、2030年頃には人間の仕事はAIに奪われてしまう。雇用が確保されるのは1割程度しかなくなるだろう。だから、失われた収入はBI(ベーシックインカム)の導入によって賄えばよいのだ。」
というものだ。
 
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私の頭が悪いせいなのか、この著者の論理にはどうも納得がいかなかった。
考慮すべき要因がスポっと抜けている気がするのだ。
 
AIの進化とともに、雇用が奪われるというのはわかる。
ところで、「でも、今のロボットの限界なんてさー、二足歩行がやっとなんだよ!」とかおっしゃる方もいるのだが、ここで言っているAIというのは、今世の中に存在している「◯◯ができるロボット」というような特化型人工知能のことではなく、人間のように様々な知的作業をこなす汎用型人工知能のことなのである。
 
 
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この汎用型AIについて、本書では軽く流されているが、この説明は『人工知能 人類最悪にして最後の発明』に詳しい。その登場はだいたい2030年頃だといわれている。
 
その雇用破壊はホワイトカラーに起こるだろうという。オフィスで必要とされる事務作業などは、AIがやったほうが間違いがなくはるかに早いからだ。
 
AIのほうが能力が高くミスもないのだから、人間が生き残れる職業は極めて少ない。詳細は割愛するが、1割しか生き残れないだろうという。となると、その1割を除く9割が生活の糧を失うわけで、著者はそれをBI(ベーシックインカム)で賄えばよいと提唱しているのだ。
 
BIの財源は国の財源なので、それは税収しかない。1割の裕福な人から多額の税金を徴収し、残り9割の人を養うということになるのだが、肝心のその1割の人はそれを受け入れられるのだろうか。そこが私には疑問だった。
著者の案は性善説に立って展開されているが、9割失業状でBI導入となると、1割の裕福な人の税負担はとてつもなく大きいのでは?
結局、1割の人(とAI)が残りの9割を養うということだし。
 
ちょうど、『税金亡命』という脱税を目論む富裕層と国税とのバトルを描いた本を読んだ後だったので、余計にそう思ってしまったのだ。今の税水準ですら脱税に躍起になっているというのに。BI導入によって大幅に税率が上がれば、あらゆる手段を使って納税額を減らそうとするのではないか。
AIは経済を根本から変えてしまうというが、資本主義自体も変わらざるを得ないのではないかとも思ってしまった。
 
加えて、著者の論理は終始一貫「AIは人間の統制下にある」ということを前提としているが、これも私は懐疑的だ。
この問題は『人工知能 人類最悪にして最後の発明』に詳しいのだが、AIにシンギュラリティが訪れ、知能爆発が起きれば合理性を追求するAIは「人間は不要」とみなしてしまうのは必然だと思うからである。
実際、グーグル社は、AIが人間のコントロールを拒否し害をなすのを抑止するための「非常ボタン」を開発した。
必要だからこそ、そのボタンは開発されたのだ。ただ、シンギュラリティの時点で、AIは大抵の人間よりも賢くなっており、それが加速化されていくわけだから、そんなボタンを回避することなんてAIにとっては簡単かもしれないが。
 
もしも、それら2点の問題をクリアできたとしても、BIという概念は特に、「働かざるもの食うべからず」という働き蜂な日本人には馴染みにくい気がする。
 
これに関して著者は「人間の価値というものは、人の役に立っているか、お金を稼いでいるか、社会貢献できているかはどうでもよいことで、人間の生そのものに価値が有るのです。」と言っている。
私のようなダメ人間にとっては大変にありがたい言葉ではあるが、著者が提唱するAIとBIの社会の実現には、我々の意識が変わることもまた前提条件なのだ。
 

 
 
 

 

 

 

 

 

 

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