スキン・コレクター / ジェフリー・ディーヴァー

本書はタイトルから予想できるように、ライム最初の作品『ボーン・コレクター』とゆるく関わりがある。

ライム・シリーズを全部読む必要はないと思うが、本書を読むにあたっては、この『ボーン・コレクター』『ウォッチメイカー』は読んでいたほうがより楽しめると思う。

特に『ウォッチメイカー』は、ライムシリーズ中屈指の傑作だと思うので再読して損はない。
タイトルにもなっているウォッチメイカーとは、四肢麻痺の天才犯罪コンサルタント、リンカーン・ライムが最も手を焼かされた犯罪者だ。
基本的にはプロの殺し屋だが、報酬次第であらゆる犯罪をやってのける。その名の通り、時計や時間に対して尋常ではないこだわりを持ち、時計と同じ精密さを持って犯罪計画を立案する

物語は、ウォッチ・メイカーが獄中死したというニュースがライムのもとにもたらされるところから始まる。
死因は自殺でもなく他の受刑者に殺害されたのでもないく心臓発作だった

ウォッチメイカーことリチャード・ローガンの正体は、最後まで謎のままだった。好敵手の死に衝撃を受けるライムだったが、ローガンの葬儀に花を贈り、遺灰の引き取りにくる遺族の反応をみようと作戦を練る。

同じ頃、ソーホーで若い女性が殺害される。死因は毒物でタトゥーを入れられたことによる中毒死だったが、その後立て続けに同様の殺人が起こる。
いずれの被害者も毒物を使ってタトゥーを彫られていた。どの被害者のタトゥーも実に見事な出来栄えだったことから犯人は相当のタトゥーアーティストだと推定される。
そして、それら被害者に残されたタトゥーの文字は、それぞれ異なっており、何か長い文章の一部だと思われた。ということは、文書が完成するまで殺人が続くということだ。

捜査にとりかかったライムたちは、現場で犯人が所持していたと思われる紙片を発見する。それは、かつてライムが解決した「ボーン・コレクター事件」に関するものだったのだ。
犯人はその事件に影響を受け今回の犯行に及んだのだろうか?
なぜ、敢えて毒物でタトゥーを彫るのか?被害者たちに彫られたタトゥーの意味は?

十八番のどんでん返しに限っていえば、最近あまり冴えのないディーヴァーが、今回はこれぞディーヴァーの真骨頂というべき出来。
展開的にこうなるだろうという予想は、ことごとく裏切られる。

それに常にディーヴァーは時代をよく観ているというか、時代の孕む問題点を鋭くえぐっているのも特筆すべきだろう。まだホットな状態で読めるのは、本国刊行からいつもあまり時間をおかずに出してくれる出版社のおかげでもある。

本作品では二人のキーとなる人物が再登場するが、その一人が『ボーン・コレクター』でアメリアから救い出された少女パム・ウィロビーだ。
アメリアとライムに見守られて成長した彼女ももう19歳になっている。お年頃とあってボーイフレンドもいるのだが、彼との交際にアメリアがヤキモキする様子は微笑ましい。
もう一人は、言わずと知れたウォッチメイカー。ライム至上最大の好敵手の再登場と次なる対決の行方は、どことなくライムシリーズのフィナーレをも予感させた。「もしかして、そろそろなのかなぁ」とも思ってしまう。

が、ライムシリーズの次作『The Steel Kiss 』では「ライムチームに新メンバーが加わる」らしいのだ。
ということは、まだしばらくは続いていくということなのだろう。

 

 

 

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