パンドラの少女 / M・R・ケアリー

2000円もしたのはどうかとも思ったが、結構お気に入り。今年のベスト10には入る?この作品からだと意外に思うが、著者のM・R・ケアリーはアメコミの原作を手がけていたのだそうだ。
 
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さて、物語の主人公は、メラニーという10歳の少女だ。
彼女は軍の施設内の独房で暮らしており、部屋からでるときは武装した軍曹に特製の車椅子に手足と首をしっかりと固定される。子供達は皆そうやって月曜から金曜までみっちり授業を受けるのだ。日曜はシャワーと食事の日。車椅子に固定されたまま薬剤を浴び、ボウルの中の地虫を食べる。
メラニーたちの身体は普通の食品も水分すらも摂取する必要がなく、地虫だけで十分なのだ。
 
メラニーの一番の楽しみはミス・ジャスティーノの授業だ。彼女は挿絵つきの本を読んでくれる。それは、神話の「この世のすべての災いをいれた匣の中身がいっぺんに飛び出してしまう物語」だ。
メラニーは匣をあけたパンドラを責めるのは間違っていると思っている。そもそも人間を罠にかけようとしたのはゼウスだし、パンドラを好奇心旺盛に作ったのも彼なのだ。
軍曹は時折子供をどこかに連れて行くが、その子供がもどってくることはない。
そして、ついにメラニーの番がやってくる・・・
 
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世界がどういう状況にあるか、メラニーたちの正体が何なのかは、読み始めるとすぐにわかる。
 
アメリカ人が大好きな例のモノだが、大きな違いはメラニーのキャラクターだろう。メラニーがどういう存在でどういう役割を果たすのかは読んでのお楽しみだが、彼女のおかげで、よくある小説や映画のように◯◯VS人間という単純な構図にはなっていない。
舞台は近未来で設定もSF的だが、ウエットで文学的な仕上がりだ。
 
原題は「The Girl With All Gift」。パンドラという名は「あらゆる贈り物を受け取った娘」という意味を持つそうだ

 

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