弁護士の血 / スティーヴ・キャバナー

安保関連法案で、国会はてんやわんや。
「プロから見て「安保法案」は何が問題なのか」というのも読んでみたが、結局「存立危機事態」というヤツをどう解釈するかが論点らしい。
法律というのは、何かにつけわざと難しく書かれている気がする・・・

しかし、本書「弁護士の血はリーガルものであはあるが難しくはない。サンプルをDLしてちょい読みしたらやめられなくなってしまった。
何しろ、いきなり主人公の弁護士がロシア・マフィアに爆弾つきのジャケットを着せられ、自分を弁護しろと脅されるのだ。掴みはOK!
スピーディに展開するので退屈している暇はない。

アメリカ人は絶対こういうの好きだろうなと思ってたら、案の定、Amazon.comでは5つ星(ほぼ)を獲得していた。
しかし、著者のスティーヴ・キャバナーはアメリカ人ではない。
なんと、アイルランド生まれのアイルランド育ち、今も妻子とアイルランドに住んでいるというのだから、ちょっとオドロキだった。

steve cavanagh

stevecavanaghbooks.comより

さて、舞台はニューヨーク。主人公は弁護士のエディー・フリンである。
彼は1年ほど前に、ある事件の弁護をしたことがきっかけで酒に溺れ、家族も仕事も失った。治療のおかげで死なずに済んだが、リハビリの費用もままならず、収入のあてもない。

そんなエディーはいきなりロシア・マフィアに拉致される。そして、爆弾つきのジャケットを着せられ、”ブラトヴァ”のボス、ヴォルチェックの弁護を引き受けろと脅迫される。
ヴォルチェックは、かつての事務所のパートナー、ジャックの依頼人だった。
二年前、ヴォルチェックはある男を殺すようリトル・ベニーに命じ、彼はそれを遂行したが、FBIに捕まり司法取引をした。殺しを命じたのはヴォルチェックだと証言すれば、ヴォルチェックの有罪は確実。勝訴はまず不可能な裁判だ。

だが、ヴォルチェックが望むのは勝訴ではなく、リトル・ベニーの命だった。証人がいなくなれば、ヴォルチェックを起訴することはできない。
リトル・ベニーはFBIに保護されているため、ブラドヴァといえども居所はつかめない。だが、明日の裁判には姿を現わすはずだ。そのときジャケットの爆弾でリトル・ベニーを吹き飛ばすというのが作戦だったのだ。
そもそも、彼らがエディーの元のパートナー、ジャックの事務所に依頼したのは、エディーとパートナーが裁判所のセキュリティースタッフと顔見知りだったからだった。それを利用し、爆弾を持ち込むことこそがエディの役割だった。

この申し出を拒んだジャックは殺されていた。そして、彼らはエディの娘エイミーまで誘拐していたのだ。エディーにとっては、目に入れても痛くないほど大事な娘だ。
言われた通りにしなければ、娘の命はない。だが、リトル・ベニーが明日首尾よく爆死しても、彼らはエイミーとエディを殺すだろう。残された時間でロシア・マフィアの裏をかき、エイミーを救い出さなければならない…。

courthouse.jpg

初っ端ロシア・マフィアや爆弾が登場するため、アクション一辺倒かと思いきや、これが予想に反して法廷劇もなかなか。というか、それがエディの命綱であり、見せ場でもある。

実際どれだけリアリティがあるかわからないのだが、この法廷シーンは素直に楽しめた。どれだけ人を陥れるかが勝負という点で、ペテンと弁護は似ているのかもしれない。実はエディは弁護士になる前は詐欺師だったのだ。

驚いたのは、ニューヨークの裁判所が24時間稼働していることだった。これは本当なのだろうか?ニューヨークは眠らない街だが、裁判所も眠っている暇はないということ?

詐欺師だったエディの過去や、トラウマとなった事件のことも、うまく組み込まれている。出来過ぎ的なところもなくもないが、こうした過去があるからこそ、読者により共感を抱かせるとも言える。

誰しも完全無比な人間よりも、多少弱い部分もある人間のほうが好きなものだ。そのほうが人間らしい。そして、それに立ち向かおうとする人間はもっと好きだったりする。
この手のシンプルなエンタメは、読者を主人公の味方につけられたら、もう8割がたは成功だ。

 

 

 

 

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