ビッグ・ノーウェア、LAコンフィデンシャル、ホワイト・ジャズを一気読み!

エルロイは「人の感情にへつらう安っぽい善良さなぞ、最後のひとかけらまで破壊してやる!」といっているが、確かに、人間には、社会には、その本質のところで、綺麗ごとだけではどうにもならないエルロイ的一面があるのかもしれない。
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それもこれも、久しぶりの新刊「背信の都」を堪能するためである。
 
久しぶりなので、順を追って慣らしながら読んでいった。
なぜなら、「ホワイト・ジャズ」に向かって、その暴力性も、狂気も、情動も、そして文体も何もかもが、より激しくなっていくからだ。
いきなり「ホワイト・ジャズ」など読もうものなら、アナフェラキシー・ショックを起こしそうなので。
 
これら三作には共通して“権威の名のもとに悪事を働く白人警官たち”と、“アブノーマルな性と狂気”が描かれている。それと“女に惚れ込む男”も。
警官たちは互いにいがみ合い敵対し、アブノーマルな性と狂気は、文字通り血を撒き散らす暴力性をもたらす。ただ、そこにある種の”純粋な愛”というものを入れ込むのも、エルロイの特徴といっていい。
 
エルロイは10歳の時に母親を惨殺されている。彼の母は、娼婦まがいのことをしており、警察はまともに捜査しなかったという。その影響で、作中死体を必ず損壊させるのだとも指摘されている。
しかし、私はどこかマザコンというか女性崇拝的なものを感じてしまう。強面の見かけとは裏腹に女性に優しい人なのかもしれない。
 
エルロイ作品に登場する女で最もいい女は、「LAコンフィデンシャル」のリン・ブラッケン。
概してノータリンの多い女性のなかでも頭がよくいい女だった。映画のキム・ベイシンガーもよかったけども。
 
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で、三冊を一気読みした結果、やっぱり私は「ビッグ・ノーウェア」が一番だと思う。一番ソフト?なやつです。
「LAコンフィデンシャル」も悪くないのだ。これら暗黒4部作で最も重要となるダドリー・スミスとエド・エクスリーの関係について書いてもある。ただし、「ホワイト・ジャズ」は私には度が強すぎる。狂気を読者にも伝染させるのであれば、もっともっと作為的なほうが好みだ。
そういえば、「ホワイト・ジャズ」はジョージ・クルーニー主演で映画化されるだのと聞いたことがあるが、どうなったのだろう。
 
ところで、この「ビッグ・ノーウェア」はミステリー作家の法月輪太郎氏が解説を書いているのだが、彼曰く、ここから続く三作品は、ホップ・ステップ・ジャンプに該当するのだという。
ただ、ホップのなんと難しく大切なことよ…
全編総じてジャズは大いなる意味をなすが、最もサックスの音色が聞こえてくるのが「ビッグ・ノーウェア」だった。サックスは楽器のなかで最も人間の声音に近いといわれる。「大いなる無」という意味のタイトルもリリカルだ。
 
アルトの音は最初は大きく、次第に小さくなり、沈黙が何度も挿入される。最後は音が次第次第に小さくなっていき、まったき静寂で終わる。そのときの静寂は、彼のサックスから吐き出されるどんな音よりも大きく感じるはずだ。
 
 
 
ただ、「背信の都」は、年代的には「ブラック・ダリア」以前の物語であるので、ここから読んでもよかったのかな?立て続けに読んだので、エルロイ疲れしてしまった。
 
 
 
 

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