背信の都 / ジェームズ・エルロイ

都知事選は小池百合子さんの圧勝に終わったが、問題は都議のブラックボックスらしい。都議連にも”ドン”と言われる人物がいて、これがまたやっかいな存在なのだそうだ。彼女の初登庁は、自民党所属の都議にスルーされたそうで、今後もなかなか大変そうである。
 
さて、さて、エルロイの「背信の都」をようやくようやく読み終わった。
ちかれた・・・
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物語の舞台は1941年12月のLA。”真珠湾攻撃”の前日に始まる。
その夜、農園を経営する日本人のワタナベ一家の遺体が発見される。一家4人は仰向けで、内臓が引き抜かれていた。駆けつけたのはダドリー・スミスとリー・ブランチャード(ブラック・ダリア)だ。
寝室には遺書ともとれる書き置きがあったが、鑑識のアシダは一家の自殺説に疑いを抱く。日系人のアシダは22歳でスタンフォードの博士になった秀才で、血清学、指紋、弾道学に通じていた。
死体の位置は不自然だし、日本人の集団自殺の遺書はもっと具体的だ。
調べたところ、凶器の刀からは指紋は検出されず、一家の背後に残されていた繊維は、強姦事件でアシダが入手した繊維と同じものだったのだ。
 
 
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『ブラックダリア』『ビッグ・ノーウェア』『LAコンフィデンシャル』『ホワイト・ジャズ』の主だったキャストが勢揃い。本書はそれら暗黒のLA4部作の前日譚なので、まだ誰も死んではいない(笑)そればかりか、その後のアンダーワールドUSA三部作に登場する人物まで登場している。
 
 
物語は、悪徳警官ダドリー・スミスのほか、『ブラックダリア』のケイ(キャサリン)・レイク、日本人の鑑識アシダ、アル中で次期本部長を目指しているビル(ウィスキー)・パークスの4人の視点で語られていく。
 
その悪徳警官ながらベティ・デイヴィスと恋に落ち、自分の婚外子への愛情を示すダドリーが魅力的だ。我らがダドスターは、これまで常に背後で糸を引くドンだっが本書では正真正銘、主役なのである。
 
警察官であるにもかかわらずバンバン人を殺し、時にマフィアの手先となって強奪を企てたりするダドだが、本書では強姦魔の被害者に花を贈ったりする優しい面もみせる。まさに、悪いやつは悪いことをするし、悪いやつがいいことをすることもあるのだ。
エルロイにとってもお気に入りのキャラなのだろう。
 
一筋縄ではいかないLA市警内部事情なども読みどころのひとつだ。
エルロイを読むと、事件を解決するだけが警察小説ではないんだなぁといつも思う。
 
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ただ、先の暗黒のLA4部作、とりわけ『ビッグ・ノーウェア』『LAコンフィデンシャル』に比べると、少し雑でインパクトに欠ける気がする。キレがないというか。
ま、本書は新たなLA4部作の1作目だというから、今後に期待だろうか。
 

 

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