愛しき女に女に最後の一杯を / ジョン・サンドロリーニ

エルロイ沼化で、一旦中断し本書へと鞍替え。
 
「愛しき女に最後の一杯を」って、、、、キザなタイトルだと思うでしょ?
 
私もそう思った(^-^)しかも、なんかゴロも悪く落ち着きがよくないような気もする。
しかし原題は、シナトラの「One For My Baby(and One More For The Road)」からとったであろう「One For Our Baby」なのだそうだ。
 
単純に訳したほうが良かったような・・・

 と、それはさておき、物語の舞台は1960年のアメリカ、パームビーチ。主人公は輸送機のパイロットのジョセフ(ジョー)・ブオノーモだ。
ジョーとシナトラとは、52年にバハマのカジノで知り合って以来の仲だが、彼はあるときシナトラから、自分の新しいGFライラをパームビーチからバーバンクに送っていくよう頼まれる。
シナトラの女たちは皆美人だ。楽しくないはずがない。
 
ところが、ライラはかつてのジョーの婚約者のヘレンだった。彼女は当時よりも美しくなり名も変えている。
複雑な心境でヘレンを送り届けたジョーだったが、その翌日、シナトラから彼女が行方不明になったとの電話がかかってくる。ヘレンは突如姿を消してしまった。
 
ジョーはわずかな手がかりを頼りにヘレンの行方を追うのが・・・
 
 
 
全編一人称で、おまけにジョーは私立探偵の免許も持っていたりする。(ただし、それを使うのはシナトラのためだけ)
 
よくあるハードボイルドになっていないのは、シナトラの存在が大きい。彼はイタリア系マフィアとの黒い噂も絶えなかった人物だ。そのマフィアを介しケネディと交流を持っていたのも有名な話である。
 
ヘレン失踪の原因に絡め、シナトラの黒いつながりが非常にうまく描かれている。何しろ、本書の幕開けは1960年なのだ。
 
ジョーやヘレンといった人物は架空なのだろうが、彼らはあたかも実在し、彼らをモデルに小説が書かれたのではないかという気分にすらさせてくれる。
 
物語の顛末はまさに歌の通り。というよりも、シナトラの「One For My Baby(and One More For The Road)」ありきの小説だ。
 
ヘレン愛用の白檀の香りを効果的に使うなど、小洒落ていて甘やかでもあるが、意外にアクションは激しめ。タイトルやシナトラの歌から受ける印象よりかは過激かもしれない。
 

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