予言的で猟奇的、最後はホラー!「ロックダウン」

「さよなら、ブラックハウス」のピーター・メイの新作と思いきや、そのすぐ後の作品らしい。

タイトルの「ロックダウン」は文字通りの意味。
致死率8割という新型鳥インフルエンザによってロックダウンされたロンドンが舞台だ。現在ロンドンは3回目のロックダウン中だが、何やら予言的。


ロックダウン (ハーパーBOOKS)

著者によれば、この小説を上梓した時期、科学者たちは鳥インフルH5N1型が世界的流行を起こしそうだと予測していたという。
予想に反し、H5N1型は流行せずことなきに終わった。
そのせいもあってか、当時イギリスの編集者たちにとって非現実的にすぎて出版に至らなかったのだそうだ。

というか、確か「さよなら、ブラックハウス」もロンドンの編集者に拒絶されているそうで、見る目がないのか、相性の問題なのか・・・(苦笑)

日本の小説にもよく似た設定のもの、「首都感染」があるが、そちらはパンデミックそのものを描いているのに対し、本書はあくまで殺人事件の解決がメイン。
そして警察小説(主人公警察官だし)

さて、致死率80%という強毒型ウイルスのため、ロックダウンされたロンドンは、感染者と死者が日々増え続け、首相さえ命を落とすという状況だった。
公園には急ピッチで救急病院の建設が進められているが、その現場でボストンバックに入った子供の骨が見つかる。
その骨は、自然に白骨化したものではなく、人為的に肉を削ぎ落とされたものだった。
法医歯学者によれば、頭蓋骨から子供アジア人でかなり重度の口蓋裂で、目立つ外見だったらしい。
捜査を担当するのは、スコットランド人のマクニール警部補。
しかし、彼の家族にもウイルスの脅威が・・・

遡ること15年前に今の状況を予想し、さらにその描写が現実世界にかなり近いことに驚く。
マスク必須、同僚のくしゃみにも神経を尖らせ、医療は逼迫。まるで今の私たちの状況そのもの。

違うのは、作中のウイルスが致死率80%ということくらい。
そこまで恐ろしい強毒性ウイルスの猛威のなか、殺人の捜査もへったくれもなさそうなものだが、作中では医療従事者と法執行官には特別にフルーキルという薬が配布されている。特効薬ではないものの、症状を改善させ生存可能性を高めるのだ。
なんとなく、アビガンを連想させる・・・

後半はかなりエグめ。
そもそも、子供の遺体の肉を削ぎ落とすというだけであらまーだが、後半は実写ならば、ほぼホラー(笑)
ただ、主人公のマクニールと法医歯学者エイミーのキャラや、その関係性などが緩衝になっているかな。

ラストはかなり賛否が割そう。でも私は悪くないと思った。

 

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