色々な国のミステリ(広義の)が読めるようになって、思ったのは、イタリアのものはかなり好みに合う、ということだ。
ウンベルト・エーコはもちろん、サンドローネ ダツィエーリのダンテとコロンバのシリーズも好きだったし、最近ではマウリツィオ・デ・ジョバンニのイタリア版87分署と言われるシリーズもかなりよかった。GW明けあたりに新作が出る予定とのことで、とてもとても楽しみ。
本書は、上記にあげたものとはちょっと毛色が違って、かなりハードボイルド路線。
タイトルの通り、主人公のオルソはマルセイユの犯罪組織の殺し屋だ。オルソは熊の意味。彼は文字通り、熊のような大男だ。そして、タイトル通り老いており、物語はオルソが心臓手術で目覚めるシーンで幕を開ける。
若かりし頃、オルソはアマルという女性恋に落ち、組織を離れて所帯を持ち娘をなしたが、組織のボスのロッソに見つかり、二人の命と引き換えに組織に戻ることになった経緯があったのだ。あれから40年。オルソは忠実にロッソに仕えてきた。
しかし、死にかかったことで、オルソはかつて愛した女性アマルと二人の間に生まれた娘グレタに再び会いたいと強く願う。
ロッソに黙って、二人が住んでいるイタリア中部の町に向かうのだが・・・
まあ、「老いた」とは言っても超高齢化社会に生きている私たちにとっては、60代ってそれほどでもないよね、と言う感じではある。「老いた男」も全然老いてなかったし。ジジイと言うなら「もう耳は貸さない」のバック・シャッツくらいのヨボヨボなジジイでなければ(笑)
なので、アクションもバリバリ。
孤独な殺し屋のハードボイルドな人生に加え、恋愛要素もバッチリ。哀愁感はチャンドラー的だなぁと思っていたら、あとがきで、数々の書評で「チャンドラー的」と評されているのだそうだ。
60代というのは、確かに人生を振り返る年齢ではあるけれど、まだ第二の人生が余裕で待っている年齢だ。
日本ほどではないにしろ、先進諸国はどこも少子高齢化で、人口ピラミッドが壺型だ。ボリュームゾーンの年齢層も高いので、本書のような小説や映画は今度のスタンダードになるのかなぁという気もする。
フィリップ・マーロウが大体30代後半〜40代前半(確かロング・グッドバイ時点で42歳だったはず)ならば、今の時代のハードボイルドの主人公は60代でちょうどいいのかもね。
我らがオルソに、その第二の人生は訪れるのだろうか。
これがね、また、あとを引かせる、思わせぶりぶりな終わり方なのですわ。
ルッソ兄弟の製作会社が映像権をお買い上げらしいが、映画化が実現すればかっこいい映画になりそう。
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