眠る狼 / グレン・エリック・ハミルトン

先日の「ゴッドウルフ読書会」で、あれ面白かったよね〜!と一部盛り上がった作品。

GW前半(デブ活中)に読んだこの小説は、エドガー処女長編賞こそ逃したものの、アンソニー賞、マカヴィティ賞、ストランド・マガジン批評家賞最優秀新人賞の三つの新人賞に輝いた。
 

いわゆる一人称語りの硬派モノであるが、健全すぎるスペンサーとは違い主人公バン・ショウは影のある謎多き一匹狼だ。
原題は「Past Crime」なのに、どうして「眠る狼」にしたのかと思ったが、一匹狼からきているのかな?
 
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陸軍レンジャー隊員のバン・ショウは、祖父のドノから、「家に帰ってきてほしい。できることなら」という手紙を受け取る。
頑迷固陋な祖父らしからぬ気弱な言葉に、不安を覚えたバンは、負傷治療中のこともあり休暇をとって10年ぶりにシアトルへ戻ることに。
 
祖父のドノは、重罪犯が送られるマクニール島で服役したこともある筋金入りのプロの泥棒だった。シングルマザーの母を幼くして亡くしたバンは、そんな祖父に犯罪のイロハを仕込まれ、ともに様々な窃盗に手を染め育った。
しかし彼は18歳になったときに、突如として故郷を捨てて陸軍入る。以来、一度たりともシアトルへ戻ることはなかった。
 
祖父の家に到着したバンは、頭部を撃たれ瀕死の重傷の祖父を発見する。
祖父は誰に撃たれたのか、なぜ、撃たれなければならなかったのか…
バンはかつての祖父の仕事仲間に協力を仰ぐのだが…
 
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物語も現在と過去の謎を織り交ぜた複雑なつくり。現在の「俺」と過去の少年時代の「僕」の語りがいい。
あらすじから予想される以上の盛り上がりと広がりがあるので、これだけ判断するのはもったいない。
 
いわゆるインタビュー小説(主人公がいろいろ聞きまわることで謎が解明するというスタイル)だが、「ザ・定型」ではない。「過去」が混ぜこまれ、伏線の張り方も洗練されているように思う。
 
アクション、ハイテク戦、カーチェイスとてんこ盛りな派手さながら、全体的にはウェットで内省的な雰囲気が強く漂っている。この静けさと派手さのバランスが好みだが、訳者の方も指摘されているとおり、雨が多いシアトルの光景もこの雰囲気づくりに貢献しているのかもしれない。
シアトルとボストンで違う街だし、毛色も異なるが、デニス・ルヘインが好きな方は、もしかしてこの雰囲気もお好きなのではないだろうか。
そういえば、ルヘイン原作の「夜に生きる」は5月20日から公開だった。
 
これから梅雨に向かうが、いっそこの雰囲気に浸りたいという方にもおすすめしたい。雨を陰鬱だと嫌っても梅雨はなくなりはしないのだから。
 
著者のグレン・エリック・ハミルトンは本書がデビュー作らしいが、「ゴッドウルフの行方 」と比べると、時の流れを意識せざるを得ない。やっぱり洗練されているのだ。
確かに昔の流行小説のなかには今でも良いと思うものもあるが、時々タックの入ったパンツで街を歩いているようなちぐはぐな気分にさせられることも多い。

この手の小説は特に、時代とともに洗練されていくものなのだと思う。
 
ところで、このバン・ショウを主人公にした物語は、3冊目の出版をこの夏に控えているそうだ。
彼にはまだまだ「ある」のだから、著者としてはそれをいかさない手はない。決してサザエさん化はしてほしくないけども(笑)
 
次が読みたいと思う小説が出版されないことは多々ある。フランク・ティリエの新刊なんて首を長くしすぎて伸びきってしまったわ(笑)
そこそこは売れてほしいなぁ。
 

 

 



 

 

 

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