埋葬された夏 / キャシー・アンズワース

確か、春の翻訳ミステリー大賞コンベンションの版元対抗ビブリオバトルで優勝したのが本書だった。何しろエルロイの新刊や、ロスマクS・ハンターを差し置いて優勝したのだ。

解説の霜月氏も言及していたが、雰囲気は「邪悪な少女たち」に似ている。
見せ方は違うし小技も効いてはいるけれど、英国の閉鎖的な田舎町、貧しい少女と裕福な家庭の少女、貧しい少女にかけられる冤罪、と設定はほとんど同じ。
材料が同じだとほぼ似たような料理になっちゃうアレ。
 
個人的には「邪悪な少女たち」のほうが読み応えがあった。「邪悪な少女たち」は個人的にはゴールドダガーを獲っていてもおかしくないかなぁという出来だった。
 
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物語の舞台はイギリスの海辺の田舎町アマーネス。
1984年の夏、この町の10代の少女コリーン・ウッドロウは、忌まわしい事件を起こし、終身判決刑を言い渡された。彼女は、黒髪の一部を剃り上げ、残りは派手に逆毛を立てたゴスメイクのウィアードウ(異形者)。彼女が有罪なのは誰の目にも疑いのなかった。
しかし、彼女の新しい弁護人により「新しい証拠」が発見された。被害者の衣服に付着していた”第三者のDNA”は、コリーンの単独犯説を覆すものだった。
元警察官で私立探偵のショーンはコリーンの弁護士に雇われ、その再調査のためにアマーネスにやってくる。
 
物語は20年前のコリーンを取り巻く当時の様子と、現在のショーンの調査状況とを行き来しながら進行していく。
 
コリーンが12歳の頃から売春を強要した母親や彼女の惨めな家庭環境、彼女を取り巻く友人たち。そこに突如割って入った町の有力者の孫娘・・・
一方のショーンの前には、事件を掘り起こされたくない人間が立ちはだかる。
田舎町の人々は20年前に解決したのだから、今更構わないでもらいたと考えていたのだった・・・
 
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面白いのは、コリーンが起こした事件がどのようなものだったのか、被害者が誰かということが、読者には伏せられていることである。
それとともに、過去の登場人物と現在のそれのつながりを推理させるような作りにもなっている。
無駄なコマは一切なし。真相が明かされるラストも綺麗で無題のない仕上がり。
 
原題は「WEIRDO」気味悪いやつ、キモいやつという意味なのだそうだ。
というか、写真をみるに、著者のおばちゃん自身もきっとそういうファッションにはまっていた少女だったんだろうなという感じだが。
 

 

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