東江一紀さん追悼 名訳にひたる『ストリート・キッズ』読書会

今回の読書会は、ウィンズロウ作品の大半を訳されていた東江一紀さんを追悼する会で、課題本は『ストリート・キッズ』。

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ゲストとして東江さんのお弟子さんだった遠藤さんと村上さんに来ていただいた。
ここでも一瞬、募集したのだが結局ほぼ常連さんで枠は埋まり、彼女たちを含めて参加者は17名。

過疎った前回の『ミレニアム』から比べると、ご覧のとおりの大賑わい。
このニール・ケアリー・シリーズを通してのファンも多かった

今回、指摘されてはじめて気づいたのだが、実は”『ストリート・キッズ』では、ハードボイルドでありながらも誰一人、人が死んでいない”
人が死にまくる「犬の力 」よりも女性ファンが多いのは、このせいなのかもしれない。

近親相姦、社会階層、薬物中毒と、悲惨且つ悲劇的要素の強いウェットな作品ながら、ウィンズロウ特有の洒脱さとナイーブな心を減らず口で隠すニールの魅力とがそれをほどよく中和しているのも人気の所以だろう。

舞台は70年代のロンドンで、時代を象徴するかのような”クラブ”シーンは印象に残った人が多かったようだ。
“死を呼ぶ精液”の演奏で、ニールが社会階層への反発心を発散させるあのシーンである。

面白かったところでは、これを映像化すると仮定するとニール役は吉岡秀隆という意見もあった。
ええっ?北の国ですか?
類似点は「父さん」だけのような気がするけども・・・

あとはトビー・マクガイアの若い頃とか、某イケメン俳優とかいう声もあり。

私は『シックス・センス』の子役の子なんてちょうどいい塩梅に成長しているかなと思ったのだが、彼はなんだかとんでもなことになっていた(驚)


な、なにがあったんだろう?
これではニール本人の
「たるんだおけつがぷるぷる」になってしまうではないか!

 

今回の読書会では、予め「翻訳が良かったところをあげろ」という厳しい宿題がでていたので、しぶしぶ原本に当たり読み比べてきた

評価が高かったのは以下の部分

P64 

Alison was the classic case of too much too soon and too little too late.
アリソンは親が溺愛すれば子が背を向け、親が見放せば子がすがりつく、という典型的な例だ。

P146 

“You’re faginesque, you know?”
“What do you mean? Ilike women.”

「おじさんは、まるでフェイギンだね?」
「ペンギンだと?あいにく俺は寒いのは嫌いだ。」

“ Is it Dirty? “
“Dirty enough, they won’t let me buy it.”

「いやらしい本か?」
「いやらしい描写が多いから、未成年には売ってくれないんだ。」

フェイギンに注釈が欲しかったという人もいたが、現役翻訳者の方によれば、そういう箇所は、どうせ注釈をつけたところでよくわからないのだから、敢えて物語を中断しないほうがいいらしい。

よい翻訳者とはこのあたりの見極めがうまく、言葉のセンスが良い人のことをいうのだろう。

また、東江さんはお弟子さんには原文にないものを自分で補ったりするのはやめるよう指導していたのだそうだ。

東江さんがお弟子さんに配布している語彙集もチラリとみせていただいたのだが、これがすごいシロモノだった。
「人並みを目指しなさい部門」とか「じゃあ、割れてりゃいいっていうのか部門」とかww
特に補足はしないが、そういう語彙です。

こういうボキャブラリーの中から“決まり金玉”などの名言はうまれたのだろう。

最後になりますが、東江さん、偉大なる業績とお弟子さんから慕われるお人柄とに深く敬意を表し、心より御冥福をお祈り申し上げます。

てか、次から誰がウィンズロウを訳すというのだろう・・・

 

 

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