なぜトランプ大統領は誕生したか「アメリカを動かす”ホワイト・ワーキング・クラス”という人々」

ちょっと今となっては古い本。アマゾンのおすすめから気軽にDLしてしまったのだが、2年前のものだということに気がつかなかった…(不覚)
今更感がハンパないが、逆にトランプ大統領誕生から2年以上経って見えてきたこともある。


アメリカを動かす『ホワイト・ワーキング・クラス』という人々 世界に吹き荒れるポピュリズムを支える“真・中間層”の実体


まあタイトルの通り、本書は民主党支持者である著者が、トランプの支持母体である白人貧困ブルーカラー層について書いた本だ。
だから終始民主党目線で、なぜ彼らは頭が良くて政治家にふさわしい(と民主党員が思っている)ヒラリー・クリントンではなく、トランプなんかに票を投じたのかという分析がメイン。
読んでないけど「ヒルビリー・エレジー」の内容にもかなり近いのかな。ところどころで引用されていた。

その傍若無人なキャラと振る舞いから、「エリート層」から蛇蝎のごとく嫌われているトランプ大統領。最近もまた「グリーンランドを買いたい」などと発言して問題視されている。売ってないっちゅーに。

本書は、アメリカ社会がはっきりと階層分けされていると自覚していることが大前提。すなわち、ピラミッドの頂点には富裕層、次がエリート層、その下には本書が取り上げるワーキング・クラス、最底辺がホームレスや生活保護世帯だ。
日本もなんとなく階級化しているということは分かってはいるけれども、まだ一応は「本音と建前」というものがある。まあ、実際はそうじゃなくても建前的には平等だよね〜的な。
しかし、アメリカはもっとずっと、きっぱりはっきりしているのだなと改めて認識させられる。

トランプが大統領に決まった直後から、「貧乏でアホな白人労働者のせいで、あんな恥ずかしい大統領が生まれてしまった!」と散々な言われようだったが、エリートの方々がバカにするその層こそがアメリカ国民のボリュームゾーンだ。

著者は「私たちはホワイト・ワーキング・クラスをバカにするのではなく、その苦しみに共感しなければならない」と主張し、分析していく。
なぜ彼らはアホみたいに教会に通っているのか?
なぜ、彼らは仕事がないと嘆くくせに、ラストベルトに住み続けるのか?
なぜ、彼らは子供を大学にやらないのか?等々。

かつて南部の集会でオバマは「ホールフーズで売っているルッコラが今、いくらするか知っていますか?」と言ったという。ホールフーズとはオーガニック食材などを扱う意識高い系スーパー。会場に来ていたワーキング・クラスの人々は「ルッコラって何かしら?」と思ったという。
そういえば麻生さんもカップ麺の価格を知らなかったんだっけ?(笑)ま、彼は富裕層だしね。
というふうに、エリート層とワーキング・クラスは住んでる場所も違えば、食べるものも、考え方も全く違う。だからバカにする前に、まず彼らのことを知りましょうよ、という大正義スタンス。

アマゾンレビューをざっとみると皆一様に大絶賛だったし、終始共感を全面に出している。ご覧の通り知性的で品もいい彼女のいうことは正論なのだろうけど、でも、ちょっと私は嫌な気分になっちゃった…
かなり気をつけて書いているのが有り有りとわかるのだけど、野生動物の生態でも観察しているかのような感じがしてしまうのはなぜなのか…?

で、結局、「ワーキング・クラス」から”抜け出す”には、どうすればいいかというと、子供をいい大学にやるということと、仕事がないならワガママを言わないで看護師とか介護士をやればいいじゃないという、どこかでよく聞くアドバイス…

結局のところ、「ホワイト・ワーキング・クラス」にとって、トランプ大統領は実のところ、最適解だったんじゃないかとさえ思う。やり方はともかくとしても。
彼は人物的にもその手法にも多すぎるほどの問題があるが、決してバカではないし何より実利的だ。
力技で国内に工場を誘致したり、強引にF35を売りつけたりできるのは、トランプだからではないだろうか。厚顔無恥だからこその技。
それに、彼らが求めていたのは、将来よい社会になるよう努めるという不確かな約束ではなく即効性だということも理解していた。そのおかげで、「ワーキング・クラス」の仕事はある程度国内に戻ったようだし、アメリカの株価は史上最高値。
この本では全然触れられていないけれど、隠れトランプには富裕層も多いし、実はエリート層にもいる。

トランプ大統領が人種間対立を煽ったのはよくないし、その諍いによる治安悪化も大問題だが、経済と雇用がよければ、ある程度の評価は得られるような気がするけどな。

人はパンのみにて生くるものに非ずだけど、そもそもパンがなければ生きていけないものね。
なんてトランプ再選できなかったりしてネ。

 

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