米中もし戦わば  〜戦争の地政学/ ピーター・ナヴァロ

本書の著者のピーター・ナヴァロ氏は、そのトランプ氏の政策顧問であり、国家通商会議代表に指名もされた人物。対中強硬派として知られる氏の重用に対し、中国側は警戒を強めているという。
本書は、日々脅威となる中国との戦争を避けるためにはどうすべきかについて書かれた本である。
 
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著者によれば、米中間戦争が起こる可能性は歴史を鑑みてもかなり高い。既存の大国は常に、新興勢力と衝突してきたのだから。
 
新興勢力である中国の台頭は、クリントン政権時代に中国との経済的な関わりを促すためWTO加盟を支援したことが大きいという。

クリントン政権は経済成長で中国の民主化が進むと考えてのことだったが、皮肉にも中国は独裁国家のまま経済発展を遂げ、一方で米国は国内の生産拠点を中国に奪われ、深刻なダメージを被ることになった。

トランプの対中貿易赤字への言及はこの説明が抜けているし、どこまで真面目に考えているのかもわからないが、経済力が中国の軍備増強を推し進めてきたことを鑑みれば防衛の観点からも看過できないのは確か。
 
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ご存知のように、中国は尖閣諸島を巡って日本と、南沙諸島を巡ってフィリピン、ベトナム、インドネシア、ブルネイ等々と、インド国境に面したアクサイチンを巡ってインドと揉めている。

阿倍総理も新年早々、フィリピンにはじまり、オーストラリア、インドネシア、ベトナムを訪問したが、その背景には中国をめぐる問題があるのは明らかだ。
中国のこの行動は、第一次アヘン戦争から日中戦争終結までの列強支配による「屈辱の100年間」に由来すると著者はいう。この間に、中国は軍事支配、海上封鎖、領土の割譲、主権の侵害、莫大な戦争賠償金に大量虐殺などを経験したのだから。
 
今、アパホテル社長の著者が話題になっているが、中国人にとって南京大虐殺は、広大な領土を失うはめになった「列強による屈辱の100年」の残虐な事実として深く心に残っている。

やったほうは忘れてしまうが、やられたほうの怨嗟はそう簡単には消えない。
同じ轍は二度と踏むまいと、軍事増強に力を入れるのは当然の帰結だ。

アパホテルに当面中国人は宿泊しないというだけならなんの問題もない。
だが、この問題がエスカレートし戦争の火種にならないことを願いたいものだ。
 
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話はそれたが、中国の軍事増強は国防のためばかりではないという。
中国は大昔の地図を引き合いに出し、先に挙げた諸国に対してその領土を主張している。
そこにはアメリカ海軍の対中国の要である「第一列島線」と「第二列島線」が深く関わっている。日本から台湾、南シナ海に伸びる「第一列島線」に、事実上中国海軍は拘束されているため、「シーパワー」戦略の妨げとなっている。
地政学における「シーパワー」の詳しい説明については「大国の掟」をおすすめする。中国にとって軍事面においても経済面においても、この「第一列強線」の突破は不可欠なのだ。
 
挑発的な行為や軍備増強ばかりでない。
今や、ハリウッドの映画産業や米国の大学の研究機関、各種メディアは、チャイナマネーに席巻されている。
映画産業は中国の大市場を無視することはできないし、チャイナマネーで成り立つ研究機関もメディアも中国の顔色を伺っている。
ノン・キネティックな手段をフルに用いて、中国はその領土的野望を果たそうとしている。
 
一方で、中国の軍事力も決して侮ることはできない。
スクラップを改造した空母の「遼寧」は西側のメディアに散々バカにされてはいるが、実は米国と中国の技術力の差は縮まりつつあるという。
何しろ、中国は開発にお金をかける必要がない。
国をあげてのハッキングでその技術を盗むのだから、米国よりも遥かに低コストで調達できる。おまけに人権やモラルといったものに縛られることもない。
まさに「量も質のうち」なのである。
その反面、米国は長引く経済不況で疲弊している。遠いアジアの国々を守ってやる必要はないと考える米国人も多く、超大国としての「世界の警察官」としての役回りにうんざりしているという。
まもなく大統領となるトランプ本人も、その発言からみるにアジア地域への米軍のプレゼンスを軽視している。
 
とはいえ米軍が即、アジアから撤退するということはなさそうではあるが、仮にそうなったらどうなるのだろう。
日中間は尖閣諸島をめぐり問題を抱えており、火種になる可能性も高い。
しかし、中国は話が通じるような相手ではないし、日本は憲法9条があるために抑止力になるような兵器を持つことができない。
かくして、日本には是が非でも米軍の傘が必要なのだ。
憲法9条を維持するにしても、アジアの平和の維持は同盟国を守ることに辟易しつつある米軍頼み。
仮に9条を破棄するならば、その事実自体が中国を刺激し、一歩間違えば核戦争にも発展しかねない。
かといって対話で解決出来るような相手でもなし。
 
いずれにせよ、「平和な世界」というのは難しいことなのだなぁ・・・
 

 

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