日本人にとっては、CIAやMI6はスパイ小説や映画など馴染みがあるが、モサドとなると「それって何?」というのが大方の反応ではないだろうか?
“モサド”とは、イスラエルの対外情報機関のことである。つまりイスラエルのスパイ組織。「世界で最も効率的な対テロ組織」であるとも言われている。
テロといえば、先日もボストンマラソンで爆発事件が起きたばかり。
現在までに日本人の犠牲者は報じられてはいないが、この爆発事件は、2001年の同時多発テロ以降、米国で起きた事件としては最大規模のものになってしまった。
謹んで犠牲者の方々及びそのご関係者の方々に哀悼の意を捧げます。
さて、本書は、『エニグマ奇襲指令 』や『パンドラ抹殺文書 』などスパイ小説の巨匠としても知られるマイケル・バー=ゾウハーらによるノンフクションだ。
バー=ゾウハーといえば、映画『ミュンヘン』の原作者の一人として覚えている方も多いかもしれない。
また、彼はイスラエルの前国会議員でもあるので、当然のことながら完全にイスラエル寄りの立場で書かれてもいる。
それにしても「イスラエル最強スパイ列伝」て…( ̄Д ̄;。もうちょっと何とかならなかったの?
『パンドラ抹殺文書 』のように、本書には美しいヒロインの前に颯爽と現れるヒーローは登場しない。
代わりにあるのは、イスラエルとユダヤの同胞のため、身を捨てる覚悟で大胆な作戦を実行するモサドの名もなき戦士たちの姿だ。
紹介されているのは21事例もの実際に起こった案件。これらは既に公になっているものや、当局から表に出してもよいと承認されたものだけで、実際にはイスラエルの閣僚にさえも秘密にされている作戦も多くあるという。だが、それでも興味をひくに充分。
伝説のモサド長官であり、部下から”闇世界の帝王”と呼ばれたメイル・ダガンの逸話からイスラエル最大の敵国シリアの核施設爆破などなど、
モサドの勇敢な成功の物語ばかりでなく、同時に、モサドのイメージを一度ならず汚し、根底を揺るがしたミスや失敗も描かれている。
就中、戦後アルゼンチンで逃亡生活を送っていたナチの戦犯、アドルフ・アイヒマンの捕り物劇は圧巻。
アイヒマンは、欧州のユダヤ人の体系的抹殺を指揮した人物として知られている。行方不明になっていたアインヒマンの情報を最初に掴んだのは、西ドイツのヘッセン州の法務長官バウア博士だ。博士自身、強制収容所を生き延びたユダヤ人で、終戦時ナチの犯罪人を捕まえ処罰することに人生を捧げようと決心した人だった。
バウア博士は、ナチ根絶に手を貸そうとしなかった西ドイツ当局を信用していなかった。そしてアルゼンチン政府にアイヒマンの身柄引き渡しを要求すれば、アインヒマンを取り逃しかねないと判断し、モサドに情報を持ってきたのだった。
しかし当時のモサド長官イサル・ハルエルは、ここで稚拙な判断ミスを犯す。アイヒマンを確認できず諦めてしまったのだ。
怒り狂ったバウア博士は、今度はイスラエルの法務長官の元を訪れる。二度目の調査でアイヒマンが確認できると、ダヴィド・ベングリオン首相はモサドにこう命じる。「死んでいてもいいから、彼を連れてこい。」と。
モサドの作戦チームのメンバーは、収容所番号の入れ墨のある生き残りが含まれ、全員が自ら志願した者だった…
モサドがCIAやMI6と決定的に違うのは、モサドがイスラエルの国益のためだけではなく、国外のユダヤ人のためにも活動する点だ。
他にも、ユダヤ教超正当派による子供の拉致事件の解決や、シリアのユダヤ人女性たちの救出、エチオピアのユダヤ人の移住作戦に携わっている。諜報機関の仕事にしてはあまりに守備範囲が大きい。
その同胞意識の強さには驚くばかり。
それと同時に物語るのは、ユダヤ人という人種の好戦的な姿勢である。
「誰かが殺しにくるなら、立ち上がってその男を先に殺せ。」というのは、ユダヤの古い諺だそうだが、イスラエルは、この諺をそのまま行動規範にしている。
歴史を振り返れば「出エジプト」から「ホロコースト」まで、ユダヤ人の迫害と虐殺は気が遠くなるほど長い歴史を持つ。彼らの遺伝子には、その迫害の歴史が刻まれているのではないかとさえ思えるほど。
敵国との間には報復がまた報復を呼ぶ。その闘いには終わりが見えない。
本書は、本国イスラエルで70週間に渡りベストセラー入りしたほどのヒットとなったというが、国の短い歴史をモサドを通じ振り返ると同時に、国民を鼓舞するプロパガンダ的役割をも担っているのかもしれない。
本書が、核武装を急いでいるイランとの戦争を臭わせ締めくくられているのはとても印象深かった。
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どうも ご無沙汰です。
『モサドファイル』は『三重スパイ』とセットでつい最近読んだばかり
映画『ミュンヘン』の垢抜けない頃のダニエルグレイグの
残忍な殺しの描写は衝撃的だったけど
モサドファイルはモサドの歴史書みたいな感じだよね
スパイマニアにとっては既知の事実を並べたような感じで・・・
私としては最近の事件を題材とした『三重スパイ』の方が
かなり興味深い内容でした
しかしながら、平和な日本人にはイスラム教徒とユダヤ人は
理解できませんは
それより『暗殺者グレイマン』何だかタイトルからして
よさそうな感じ、早速ポチらせていただきました。
では
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アラフォーおさじさん、こんにちは。
そうか、『三重スパイ』面白いのか。私も早速Amaをみてみます!
さすがスパイものの師匠!
『モサド〜』は、ユダヤ国家とアメリカの軍需産業に関する記述もなく、ちょっと…な感じもしましたね。
ま、バー=ゾウハーはご自身もユダヤの方なので、当然といえば当然なのですが。
> しかしながら、平和な日本人にはイスラム教徒とユダヤ人は
理解できませんは
本当ですよねぇ…。
特にイスラムは、色々やっかいだし分かり合おうというのがそもそも無理かも。
『ユダヤ人の歴史』という本が文庫になったので、ちびりちびりと読んでますが、もう仕方ないよね、みたいな感じ(笑)
一部で声が裏返るほど評判の『暗殺者グレイマン』、
アクションシーンが特に痺れるらしいですが、如何せん早川のこのタイトルセンスは…。
実は、刊行されたときから面白そうだな、とは思っていたのですが、このタイトルに萎えて、買いそびれてたんですよね(苦笑)