コンプリケーション / アイザック・アダムスン

本書『コンプリケーション』 は、百塔の街プラハを舞台にした幻想ミステリ

ルドルフ・コンプリケーションと呼ばれる複雑時計をめぐる、今年のUSオープンテニスのごとく混乱をきたした物語だ。
まさかジョコビッチに錦織が勝つとはね・・・

入り組みすぎており、初読ではよくわからなかったところもあるが、少なくとも今年の江戸川乱歩賞受賞作よりも楽しめた。
賞といえば、受賞は逃したものの2013年のMWA、オリジナルペーパーバック賞にノミネートもされている。(ちなみに受賞作はベン・H・ウィンタースの『地上最後の刑事』 。)

物語は、ある土曜日の朝、リー・ホロウェイが父親の死の知らせを受けるところから始まる。芝刈りの最中心臓発作で亡くなった父は、リーと同じ名だ。

半ば喪失状態で事務的に葬儀を済ませ、父の家の片付けをしていたリーは、父の遺品の中にある手紙を発見する。
「あなたの息子さんのポールは洪水で死んだのではありません。」
それは、リーの弟、ポールの死について書かれた手紙だった。差出人は、ポールと交際していたと思われるプラハ在住の女性ヴェラ。手紙には、会ってポールの人生に関わる重大なことを話したいと書かれていた。

父は航空券とホテルを予約していた。同じ名前のリーはそれを利用し衝動的にプラハに飛ぶが、そこでリーは弟のポールが、ある時計の窃盗に関わったことを知らされるのだった。
ルドルフ・コンプリケーション。それは、16世紀のローマ帝国皇帝ルフドルフ二世のために、お抱え錬金術師エドワード・ケリーが作った複雑時計で、何世紀もの間行方不明になっていたものだった。

ポールは、時計が展示されていたギャラリーに勤めていたヴェラと共に時計を盗み出す計画を立てたが、時計とともに姿を消してしまったのだという。
その時プラハの街は洪水にみまわれ、その5日後、ポールの衣類だけが発見された。そして時計は未だ行方不明のままだ。彼女は、この盗みの計画には第三の男がかかわっており、ポールはその男に殺されたにちがいないという。

ここから、物語は現実と幻想、過去と現在に激しく揺れ動きながら進行していく。
中古のガイドブック「プラハ自由自在」を頼りに、リーはポールの足取りを追う。そんなポールの前にソロスという元刑事だという男が現れて・・・

冒頭には本書のタイトルになっているComplicationという名詞の意味が5つ挙げられている。
1,困難な状況、
2.込み入った種々の要素の結合、

3.合併症、余病、
4.時、分、秒を表示する以外にもさまざまな機能をもつ時計、
4.解決困難な問題

本書は、4の複雑時計ルドルフ・コンプリケーションを中心にして、上記全てをテーマにしている。
それとともに、リーが宿泊しているホテルの壁にかけられた絵や、途中途中に差し挟まれた「鏡の迷宮事件」の調査報告書が意味するところも、二度読みしてはじめて理解した後、驚かされる。本書自体が、まさにルドルフ・コンプリケーションのごとく複雑な構造をなしているである。
この複雑時計は、時を刻むのみならず、同時に時間を巻き戻し、これを持つ人に永遠をもたらす。

訳者もあとがきで言及しているが、確かに映画(映画)『メメント』を彷彿とさせるところがある。
頭が混乱してくるのだ。
時系列パズル的で、私はフィツェックの「アイ・コレクター」を連想したが、フィツェックのが普通のルービックキューブなら、こちらは正十二面体という難度だろうか。
というかキチンと面が揃うかどうかも怪しいが。

ただ、同時に幻想文学的趣向が強く、プラハという街を体現しているかのような”不条理さには好みが割れると思う。

 

 

 

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