毎年恒例の年末のお楽しみがやってきた。
そう、ジェフリー・ディーヴァーだ。
お正月休みに読もうととっている人も多いだろうが、私は目の前のご馳走を我慢できない。どうせ年末は呑んだくれていることだし…💦
ライムはある事件がきっかけでニューヨーク市警の顧問を退き、大学で教鞭をとっている。そのためアメリアは民間人たるライムの助けは得られない。
そんな彼女の目の前で突然エスカレーターが事故を起こす。「未詳40号」という敵を追っていた最中の出来事だった。エスカレーター終点の乗降板が開いたため、機械室に落ちた男性が歯車に巻き込まれたのだ。アメリアは男性を救おうとするが、奮闘むなしく男性は死亡してしまう。
アメリアはライムに、亡くなった男性の妻子のため賠償訴訟に協力するように頼むが、ライムは調査の過程で、これが事故ではなく仕組まれたことであることに気づく…
「リンカーン・ライム・シリーズ」も、本作で実に12作目。毎度毎度、時流に沿ったテーマを選び、徹底的に調べるその姿勢には今更ながら頭がさがる。今(というか昨年?)、ディーヴァーが取り上げるテーマとしてIoT以上にふさわしいものはない。
Iotとはモノのインターネットのこと。最近テレビCMでみるようになったAIスピーカーなどもその一例だ。家電をはじめとして、冷暖房システム、自動車、工業製品の多くがコンピューターを内蔵し、遠く離れた場所からアクセスすることができる。
この本の直前に「自動車会社が消える日」というセンセーショナルなタイトルの新書を読んだ。車のIoTによって、ハード面よりソフトが重要になる。それには従来の自動車メーカーよりグーグルなど企業のほうが圧倒的に有利だ。
しかし、我々の生活をますます便利にしてくれる「モノのインターネット」化に死角はないのか?というのが今回のテーマ。
ただ、ディーヴァーの代名詞と化している「どんでん返し」には飽きがきていたのも事実だ。「どんでんのどんでん」などは他の作家も真似したりしており、今ではありきたりになってしまった。
こうしたマンネリをどう打破するのかと思って読んだが、予想よりよかったかも。
ややご都合主義的なところもあるし、「未詳40号」こと犯人のストーリーは私にはわからないところもあったが、何より新メンバーの投入が効いた。
前作「スキン・コレクター」の訳者あとがきでも触れられていたが、ライムのチームに新しいメンバーが加わる。
ライムの新しい弟子は、セルリアンブルーの瞳を持つ女性で、ライムの苦悩を共有できる。アメリアが揺らがないわけがない。そんなアメリアの前にも…
思ったより波風は立たず肩透かしな感もあったが、これまた意外な人物のおかげで再びライムが戻ってくれたことは喜ばしい。
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