フィクション

サンドリーヌ裁判 / トマス・H・クック

2015-01-23

2014年のエドガー賞ノミネートされたものの、惜しくも受賞を逃した作品。(エドガー受賞はウィリアム・K・クルーガーの『ありふれた祈り』

クックなので、また例の「過去の秘密系」かなと思いきや今回はちょっと違った。
評価は…これは賛否あるだろうなぁという感じ。

物語は主人公の大学教授が、妻殺害の容疑で裁判にかけられるシーンから始まる。

被告はサミュエル(サム)・マディソン。
アメリカ南部の田舎町コバーンの大学の終身在職権のある教授だ。殺害されたとする彼の妻サンドリーヌも同じコバーン大学の教授だった。

サンドリーヌは痛み止めの薬を飲み自殺した。サムが彼女を殺害したという物証はなかったが不利なことはいくつもあった。
まず、愛人のために書いた具合の悪い短編小説があり、パソコンのなかには不穏な検索履歴や愛人あてのEメールがあった。
サンドリーヌの血液中には不可解な成分があり、何よりサムは”冷血漢”に見えた

裁判が進むにつれ、サムに不利な証言や証拠が積み上がっていく。
そんな中、サムはこれら全てがサンドリーヌによって巧妙に仕組まれた罠ではないかと疑い始めるが・・・


本書の帯のキャッチは、
「結婚は人生の墓場ではなく、人生の処刑場かもしれない」

いやいやいや、、、
私はこの本からこんなネガティブなことを感じてほしくはないなぁ。

というか、そういう内容じゃないような・・・

確かに人は変わるものだと思う。結婚当時、自分が愛した人間も、時間とともに環境とともに変化していく。
サムも、その昔は奇跡的にニューヨーク大学に合格し、奨学金を手にしたミネソタ育ちのひょろ長い青年に過ぎず、”偉大な小説家になる”という芸術的野望に取り憑かれていた。サンドリーヌに出会ったのはそんな時だ。それが今ではインテリ臭漂う嫌みな男に成り下がってしまっていた。

そういった変化に対して、どう対処すべきなのだろう?もちろん相手からしてみれば、自分自身だって変わり果てているかもしれない。

片目をつぶって毎日をやり過ごしている人も多いだろう。そういった夫婦関係に問いを投げかけるような小説だと思う。

ドロドロとしたものだと思われるだろうが、実は読後は温かな気持になれる。そして自分にとって、自分たちにとっての”ボトムライン”は何だろうかと考えさせられる。

サムとサンドリーヌの夫婦の他にも、は本書にはもう一組印象深い夫婦が登場する。サムの浮気相手エイプリルと彼女の20歳も年上の夫だ。彼らの関係性にもしみじみとさせられた。

 

 

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