無実 / ジョン・コラピント

三連休も最終日だ。皆さん、旅行にいったり、お出かけとかしているのかな?いいな、いいな。

連休中、読んだのがジョン・コラピントの「無実」。翻訳は先ごろ亡くなった横山啓明氏。
「死の相続」や、最近ではマイケル バー=ゾウハーの「ミュンヘンーオリンピック・テロ事件の黒幕を追え」、チャールズ・カミング「甦ったスパイ」などスパイ小説も訳されていた。
スティーヴ・キャバナーの「弁護士の血」もよかった。癖がなくて読みやすく硬派系には欠かせない方でした。
謹んでご冥福をお祈り申し上げます。
 

 
さて、本書「無実」のキャッチコピーはずばり「問題作」なのだ。アメリカでは評価は二分したという。
何が問題なのかというと、本書は「近親相姦」と「未成年に対する性」を扱っているのだ。「近親相姦」もさることながら、「未成年に対する性」というのは、ことアメリカにおいてはタブー中のタブー。とはいえ、作中のそれはいわゆる「ペドフィリア」ではなく、もう少し年齢がいったハイティーンをターゲットとしているのであるが。
 
日本にはそういう人は多そうだけど・・・
 
何しろ10代の山口百恵が「あーなーたに女の子の一番、大切なー、ものをあげるわー」と歌って大ヒットするお国柄。(←古い!)もっと古くは源氏物語では、幼女のうちから育て妻にしてしまうのだ。
 
ただ、日本でも18歳未満と猥褻な行為をすれば、淫行条例に抵触する。
 
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ともあれ、本書は、ゲスで最低な「エフェボフィリア」の男が、なんでも自分の言いなりになる考えなしのバカ娘を使って、お人好しで善人の男性の人生を滅茶苦茶にするという物語なのである。
 
このエフェボフィリアの男デズは、かつては名門大学を出た弁護士だったが、「女の子」に手を出し、今はトレーラーハウス暮らしをするまでに落ちぶれている。
そんな時、作家のウルリクソンが、自分の言いなりのクロエの母親の元ボーイ・フレンドであることを知り、ある計画を思いつく
ウルクリンは2流のミステリ作家だったが、「閉じ込め症候群」の妻と、幼い娘のことを綴った自叙伝が大ヒットし、一躍時の人になっていた。「閉じ込め症候群」とは、視覚、触覚、味覚、嗅覚や大脳の働きは健常者と同じだが、自らの意思で動かせるのはまぶたと眼球だけという病である。
 
そんなウルリクソンの元に一通の手紙が届く。それは実の娘の法的申し立て書だった。17歳のクロエは、唯一の身寄りであった母親を亡くしため父親だと知らされていたウルリクソンに法的保護を求めているという内容だった。
人のいいウルリクソンはDNA検査に同意し、クロエを家に引き取るのだが・・・
 
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これ、何が怖いって、どんな男性でもウルリクソンと同じ状況ならば、罠にはまってしまうだろうなぁということだ。
ウルリクソンの妻は、四肢麻痺で車椅子での生活を余儀なくされている状況。当然、性的交渉はかなわず、彼は抑制された生活を送っていた。そこに、突如17歳のクロエが登場するのだが、彼女は デズの作戦通り彼を誘惑するつもり満々。本当に親子関係があれば、フェロモンか何かが「近親相姦」を阻止する役割を果たすというが、彼らの間にはそれが存在しない。無邪気なふりをして誘いをかけるクロエと、自らを抑制しようと闘うウルリクソン。
読んでいて、ウルリクソンが気の毒でいたたまれない気持ちになってしまった。
 
ある意味、本書のテーマは、「性的欲求を完全に退けることは可能か」、ということにもある。
性欲は、食欲、睡眠欲と並び三大欲と言われるが、飢餓状態で本能的な欲望をコントロールするのは難しいのだろう。
わたしの食事制限のダイエットが難航するのにも、立派な理由があるわけだ。
 
また、女性は、倫理面を別にすれば、自分の子供を持つ持たないの選択肢は自分で選べる。だが、男性はそうではない。若き日の一夜の出来事が、忘れた頃に追いかけてくる可能性も十分あるのだから。
 
ウルリクソンに同情しつつ読んでしまったが、デズのような男の罠にはまらないためにはどうしたらよかったのだろう、ということも考えてしまった。
批判されることを承知でいえば、奔放な生活を送っていたクロエの母親のような女性と関係しないことが一番なのかな。
君子、危うきに近よらずです。
 

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