フィクション

デビルズ・ピーク / デオン・マイヤー

2014-12-31

大納会も美容院も大掃除も、珍しく買い物も全て済ませたので、優雅に読書。
捗る。


  
横浜読書会を通じていただいた『デビルズ・ピーク』

うぉ、デオン・マイヤーですよ!!!

600ページを超えるボリュームなので、さすがに一日で読むのは難しいかなと思ってたら、なんと読めてしまった。

世界屈指のミステリ作家だと言われているデオン・マイヤーは、見た目ワイルドなおっちゃん。


少し前までは、「南アフリカのコナリー」とも言われていたが、最近冴えないご本家より上だと思う。

本書もマルティン・ベック賞を受賞しており評価も高い。

ただ、日本ではいささかツキがない。
日本初登場の『流血のサファリ』 は、版元倒産。
その続編ともいえるレマーシリーズの『追跡者たち』はハヤカワから刊行されたものの、なぜかデオン・メイヤーに変更。

しかも、前者はおそらくは倒産間際という版元の社内状況のために、後者はハヤカワであるがために翻訳クオリティがあまりよくない。

もったいないなぁ!と思っていたので、集英社文庫から出てくれてとても嬉しい。デオン・マイヤーに戻ったし。

南アフリカの作家なので、舞台は南アフリカ。
日本から遠く馴染みの薄い国なため敬遠されがちだが、警察小説やハードボイルドにウルサイ人にこそ読んでもらいたい。

舞台は灼熱の南アフリカの西ケープ州。物語はマイヤーお得意の三人の人間の群像劇から始まる。

アルコール依存症の警部補ベニー・グリーセル。愛した女の忘れ形見の息子を強盗に殺されたコーサ族の男トベラ・ムパイフェリ。牧師に自分の罪を告白する娼婦クリスティーナ。
彼らは三人三様に苦しみを抱えている。

ベニーは腕の立つ刑事だが、南アの犯罪者と警察官がおかれた現状に打ちのめされ、酒に溺れている。
トベラは、南アの司法制度に裏切られ失望していた。息子が無惨に殺されたというのに、その裁判ではトベラの経歴にばかり焦点が当てられ、挙句警察は容疑者の逃亡を許してしまったのだ。
息子を殺した容疑者を追うなかで、トベラは「赤ん坊をレイプした男」に出くわす。アフリカでは赤ん坊と交わることでエイズが治ると信じている者がいるのだ。
このとき、トベラは「アルテミス」となる決心をする。腐った司法にわかり正義の鉄槌を下すのだ。

他方、娼婦のクリスティーナは、牧師に「自分がなぜ娼婦になったのか」を話はじめる。そして「どのような罪を犯したのか」を・・・


仕事に疲れきり、家庭が崩壊した刑事というのは、もはや警察小説定番。疲れた身体を引きずるように陰惨な事件と対峙し、どこかタガのはずれた犯人を追いつめるというのは、もはや北欧警察小説の様式美だ。
これ使えばばそこそこの警察小説になるし、ちょっと気のきく社会問題に絡めておけば傑作にもなる。

だが、デオン・マイヤーにはそんなものは必要はない。マイヤーの手にかかれば、やはりひと味もふた味も違うものに仕上がる。
それぞれの理由で神を信じられなくなったベニー、グリーセル、クリスティーナの三人の物語が収斂していく様は、悪魔がもっている三つ又の槍のようでもある。

原題も同じく『Devil’s Peak』だが、読み様によっては『Devil Speak』ともとることができると訳者は指摘している。
彼らにとっての悪魔とは何か、神とは何かがテーマになっているともいえるだろう。

 

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