雄大な大自然が舞台。冒険小説だけどちょっと神秘的な「熊の皮」

ちょっと立て込んでいて、しばらく前からチビチビと読み始め、ようやく読み終わった。
この間まで寝付きが悪くて困っていたのに、最近はバカみたいに眠れて困る。冬眠かな?(笑)

あらためて読むとつくづく魅力的な小説だなぁと思う。
アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀新人賞を受賞作だそうだが、それも納得。


熊の皮 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

舞台はアメリカとカナダにまたがるアパラチア山脈の麓。ヴァージニア州のターピン郡の広大な自然保護区だ。
この大自然の描写がいい。濃密な森の空気感が感じられ、そこに生息する野生動物や大地の香りまでもが漂ってくる。

主人公のライスは過去から逃げるため、はるばるアラバマからやってきてこの自然保護区の管理の仕事に就いている。
雇主は理解ある資産家の女性だ。
彼は人と極力交わらない生活を送っていた。

しかしある日、密漁禁止区であるライスの管理区内で、熊が無残に殺されていることを知る。手足を切り取られ、内臓を持ち去られ放置された雌の熊。その事実を教えてくれたのは、ふらりと現れた謎のきのこ摘みの片腕の男だった。

熊の胆嚢や手足はアジアで人気があり、闇市場では高値で取引されている。時にその代金はメタンフェタミンやヘロイン、鎮痛薬のオピオイドで支払われることもあるという。仕切っているのはマフィアだ。

ライスの管理区域内で殺された熊はすでに6頭にも及んでいた。

目立たぬことを心情としてきたライスだったが、あの雌熊の無残な亡骸が、彼自身のトラウマを思い出させ彼を動かす。そして密猟者狩りを決心するのだが・・・


プロローグは刑務所シーン。ここから察することはできるものの、ライスの過去の出来事とトラウマは徐々に明かされていく。
かつて生物学者を目指していたライスが、なぜメキシコの刑務所に服役するハメになり、なぜ今はこの土地でひっそりと身を隠すように暮らしているのか。


読み始めに感じた静かな印象よりも後半はずっと激しい。
荒っぽいシーンも多いが、ほのかにスピリチュアル。
かと言って、決して安っぽくはない。

大自然の前には、神秘的なことだって十分起こりうるのだろうなぁとさえ思わせてしまう。
山岳信仰にもどこか通じるものがある感じ。

ライスに懐く犬もとても可愛いので、犬好きさんにもおすすめ。



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